「巨木のある風景」

逆さトチ 青森県新郷村
逆さトチ 青森県新郷村

誰よりも昔からずっとそこにいるので、巨木を中心に環境は完成している。

巨木の造形には無駄がない。風雪に耐えて自然のままにその形になっているのだ。

巨木がそこにいるだけで私たちは癒される・・・

14.白神・青山のブナ(しらかみ・せいざん)

 十二湖で深浦の東北巨木調査研究会の会員2名と合流し、新発見したというブナに向かいました。このように県内外に会員がおり、情報提供や協力をしてくれるのでありがたいことです。
 林道を一時間かけて目的地に向かいましたが途中は車一台通るのがやっとです。
 枝の葉で目の前が見えなくなる片側が崖の薮の中をかきわけながらの危険な行軍です。車は葉っぱや木の枝がもろに車体にぶつかるという連続でした。しかも雨が降っていて道路も岩が崩れていたり壊れていたのです。

 そして、やっと辿り着いたのは林道から少し入った山の中。その整然としたブナは森の神のようだった。素晴らしい単幹のブナの巨木で、単幹で5.31メートル、樹高30メートルもあるブナでした。林道のそばでありながら伐採されていないのは、何かしら畏敬の念を感じたのに違いありません。根回りは、何と8メートル近くありました。撮影の際、周りの植物を傷つけないようにと板谷さんから注意がありました。

 発見者は深浦町の青山章(あおやまあきら)さん。新入会員です。
板谷会員(白神山地ガイド)の友人です。記念に私(田子の小熊)も一枚撮っていただきました。二度と来れないと思いますから・・・命がけです。

 大変貴重な健康なブナの巨木です。私と比べてもらえば樹の大きさが分かると思います。斜面に立っているので、上部の斜面の地上から計測するのでこのような数値ですが実際は7メートルぐらいのイメージがあります。「白神青山(しらかみせいざん)のブナ」と銘々されました。

 測定、撮影の後、また6キロを1時間かけてようやく林道入口に戻りました。一時は、タイヤがはまり今日中に帰れなくなるのでは、そして二度と来る所では無いと思いました。帰還を記念しての撮影。高渕会長の車は、サイドミラーは取れるは、満身創痍とはこのことでしょう。

 今回探索に参加した会員の皆さん。左から、青山さん、高渕会長、板谷さん、蛯名さん、小沢さん。そして私、山本の6名です。

13.白松(ハクショウ)の謎

 八戸市のハクショウ

 

 八戸東高等学校のハクショウ(白松・国内でも珍しい松)は、アカマツやクロマツなどとは全く異なり、樹皮は鱗片状に脱落し、そのあとが黄褐色~緑色となります。老木は白色となり名前の由来となっています。
幹だけを見て、上を(葉を)見なかったら、絶対に松とは思えません。世界中で珍重され、聖木としても扱われ、中国や国内では寺院の庭、世界では植物園で主に見ることができるそうです。

 国内では高野山のハクショウが「三鈷の松(さんこのまつ)」と呼ばれ知られています。3本の松葉が対になっている三葉松の様子が、密教の仏具である三鈷杵(サンコショ)に似ているところから名がついています。
このように、ハクショウはかなり珍しい木であまり目にする機会がないそうです。
学校が建つ前はお寺の敷地だったといいます。聖なる樹として植えられたものと推測します。世界的にも珍しい樹がいつ誰の手によって八戸に植栽されたのか謎です。

天然記念物第8号に認定された樹齢約600年の白松


 韓国の斎洞(チェドン)の『白松』が植えられた時期は 明確ではありませんが、中国を行き来していた役人たちが持ち帰り、植えたものと考えられています。

ちなみに『白松』は成長が遅く、移植が難しい松ですの で、昔から珍重されてきたそうです。『白松』は松葉が3本ずつ一緒に生える『三葉松』で、原産地の中国・北京でも今ではほとんど見ることができないほど絶 滅が危ぶまれている貴重な松です。

 幼いころは青みがかった灰色ですが、成長と共に木の皮が剥がれ落ち、だんだんと灰白色に変化するため、『白松』又は『白骨松』とも呼ばれています。斎洞の『白松』は木の高さが15m、幹の周辺が4.25m、樹齢600年をこえた老松で、地表から75cmほどのところで幹が二 股にわかれ、V字の形をしています。またそれぞれの枝は東側に5m、南側に7m、北側に7m広がっており、その美しい形を誇っています。このように『白松』はなかなかお目にかかれない珍しい松で、長い年月に渡って先祖たちから守られ、かつ生物学的資料としても価値が高い天然記念物として指定、保護されています。斎洞の白松も1962年12月3日、天然記念物第8号に指定されました。

12.悪戦苦闘の果てに辿りつく (田子町四角岳)

田子温泉で巨木情報

 

 この「まんだの木」の話しを聞いたのは、私こと「田子の小熊」が熊原川の上流で尺ヤマメを釣りあげて気を良くし、田子温泉で入浴した帰り、主人から「お茶でも飲んでって」と言われ、世間話しをしていたら、何と四畳半もある「まんだの木」が四角岳にあるという情報をいただきました。田子町にある四角岳は、青森県・岩手県・秋田県の県境にあるツキワグマがたくさんいる場所といいます。

 半信半疑ながら、その場所への案内をお願いしました。主人は切明畑さんといって、昔マタギをしていた方で、仕留めた大きなツキノワグマの毛皮や宝物にしている熊の牙など見せてもらいました。切明畑さんはこの辺の山は庭みたいに良く知っており、よくキノコ採りなどに行くといいます。早速、東北巨木調査研究会の高渕会長に連絡し9月6日に調査することになりました。

 

四角岳の「まんだの木」調査

 

 調査メンバーは、会長の熊さん、写真家の三本木さん、田子温泉の主人・切明畑さん、キノコ採り名人・千葉さん、樹木医の釜淵さん、千葉さんの愛犬「ヒメ」、そして私こと田子の小熊、6人と1匹で調査に向かいました。

 千葉さんの話しではクマがよく出没するので、愛犬と一緒でなければ山に入れないといいます。

よく見てください。洞の上からのぞく千葉さんがいます。
よく見てください。洞の上からのぞく千葉さんがいます。

根曲竹の薮漕ぎ 

 

 出発してすぐ、頭より高い根曲竹の薮漕ぎが始まりました。前を行く千葉さんについて行くのがやっと、悪戦苦闘をしていると千葉さんの「見えたぞー」の声がしました。森のような「まんだの木」が見えました。だがここからが大変、道なき道の薮漕ぎがあり、「まんだの木」がぜんぜん近くならないのです。

 体力と気力もなくなる頃ようやく到着しました。圧倒するような存在感、苦労したかいがありました。千葉さんたちはこの巨木を迷わないように目印にしているといいます。「まんだの木」には熊の寝床のような洞があり、入ってみると木にスイスイ登っていった千葉さんが上からのぞいていました。巨木の調査や撮影が終わり、ゆっくり「まんだの木」を眺めながら昼食をとった後、帰途につきました。途中から千葉さんがちょっとキノコを採って来るといって姿を消しました。

 

マイタケをもらう

 

 駐車場で待っていると千葉さんが5分ぐらいで戻ってきました。何と背負籠一杯の高級な天然ブナマイタケ採ってきたのです。千葉さんは「お土産に好きなだけもっていけ」と言いますが、気の小さい私たちはひと掴みしかいただくことができませんでした。家に帰りそのマイタケの入った肉鍋を食べながらもうふた掴みもらってくるべきだったと後悔しました。

 この「まんだの木」は案内してくれと言われてもあの薮漕ぎを考えると行きたくない場所です。千葉さんは「3万円ぐらいくれるというのであれば考える」と言ってにやっと笑っていました。

 

 四角岳の「まんだの木」は、環境省の巨樹・巨木林のデータベースで確認したところ、7.86mもある国内最大級の「シナノキ」でした。

 

手前左から三本木さん、クマさん。後列左から千葉さんとヒメ、切明畑さん、樹木医の釜淵さん
手前左から三本木さん、クマさん。後列左から千葉さんとヒメ、切明畑さん、樹木医の釜淵さん

11.光を撮る (岩手県洋野町・和座川上流)

 巨木の探索をしていると、ときどきこんな光景に出会うことがあります。こんな瞬間は何分も続きません。見とれていると消えてしまいます。一生の中で何回も見ることがないでしょう。私は写真家ではないので大きなことは言えませんが、その瞬間を切り取れたときは幸せです。

 一度見た巨木も季節によって姿を変え迎えてくれます。まるで私が来るのを知っているかのように・・・。ある時は風のなかで、ある時は霧をまとって、ある時は光の中に立っています。何百年もそうしてきたように、そしてこれからも・・・。

 

小さな命たち 

 

 舞い降りた光の中に「蜘蛛の巣」が浮かびあがり小さな羽虫がもがいています。一匹の蜘蛛が少しずつその命に近づいていました。

 

 羽虫の命

 蜘蛛の命

 私の命

 それぞれひとつの命

 宇宙の中の小さな命たち

 

10.巨木に会いに行こう (白神山地)

 巨木を探索・調査していると、ふいに巨木から声をかけられることがあります。

それは「あいさつ」のようなもので、「よく来たな」「気をつけて帰れよ」というようなものです。何百年も生きているとテレパシーのような霊力があるかもしれまん。

そんな巨木たちにまた会いたくなるのです。

白神のケビン
白神のケビン

9.端神のオオヤマザクラ (岩手県久慈市山根六郷)

撮影 2009年5月3日
撮影 2009年5月3日
山根の風景
山根の風景

日本の里百選の「山根六郷」


 2009年1月。暮らしが育んだ健やかで美しい里を求めて、朝日新聞と森林文化協会が進めた「日本の里百選」(映画監督山田洋次さんが選定委員長)で全 国4474件の応募、2000件の候補の中から「景観」「生物多様性」「人の営み」を基準として審査された結果「山根六郷」が100選に選ばれました。

山根六郷のまつり 


 なつかしい郷土料理や、渓流のせせらぎが心にしみる端神地区の「桂の広場」では、4月から12月までの第1日曜日「くるま市」ゆかべと呼ばれる手作り豆腐や栗餅、おから餅
焼きストギなど、山根六郷に伝わる郷土料理が人気を集めています。また、5月と11月に開催される「水車まつり」では、そば打ち体験や郷土芸能が披露さ れ、大勢の観光客で賑わいます。山根六郷に つたわる郷土料理の数々いまや健康食として注目を集めている雑穀をつかった寒冷地ならではの味が楽しめます。

水車まつり
水車まつり

端神のオオヤマザクラ


 5月の連休に「水車まつり」に仲間と訪ねてみた。まつりの期間に開館されているという「山根六郷写真美術館」の入口の正面にこの「山ざくら」の写真がありました。受付の方にこの山ざくらのことを聞いたら「今日より早くても、今日より遅くても駄目、今が最高の見頃」と伺い場所を聞きさっそく行ってみたのがこの写真です。
 端神の「桂の広場」から山に5キロほど狭くて車がすれ違うことのできないような道路を入った牧場の中にありました。「見事、あっぱれ!」としか言えませんでした。おそらく地元の人しか知らないであろうこの山ざくらの巨木がひっそりと満開で咲いていました。
 見学するのであれば、やはり5月の連休でしょう。この連休期間のみ渓流釣りが解禁されます。山根を流れている渓流全域で岩魚が入れ喰いでした。
 まつりの日以外に行っても、人もいないしお土産などなく景色をながめるだけです。あまり多くの人に知られたくない「端神の一本ざくら」です。

 

8.森の神に会いにいく

冬の「森の神」
冬の「森の神」

日本一のブナに会いたい

 

 2010年2月ごろだったと思うが、このブナに会いたくてウォーキングのメンバーとカンジキで行きました。ところが吹雪になり途中で引き返してきました。そして今回再挑戦ということで精鋭3名で向かいました。奥入瀬渓流から奥入瀬バイパスに入るのだが除雪していなくて、入口から4時間半の雪中行軍となりました。

 おまけに、3人の中で「森の神」に行った者はいませんでした。森林管理署からいただいた地図だけが頼りでした。そして、それらしき場所に来たのだが看板もなく30分ほど森をさまよい歩きました。そのうち小笠原さんの声が聞こえました。「見つけたぞー」の声、雪に埋まっている看板が決めてだったといいます。

森の神
森の神

神々しい巨木

 

足跡一つない森の中にそのブナの巨木は雪の中に立っていました。見上げるとブナは青空に向かって神々しく手を広げて迎えてくれました。雪のない時期であれば車から降りて5分もすれば着ける場所なのに何故と思うかも知れません。それは行って見た人には分かると思います。

 記念の写真を撮ったあとスキーで坂道を下りました。焼山の温泉で温泉につかり至福のときを過ごした3名には、今日の日は忘れることのできない1日となりました。

7.ブナの森坐禅会 

第2回 森の坐禅会
第2回 森の坐禅会
バリーグロスマン
バリーグロスマン

森の座禅会

 

 おいらせ町にある参禅道場「興雲寺」住職の新山さんを訪ねました。森の神を見て感動したこと、その森の神の場所で坐禅会を開催したらと提案しました。新山さんは即その森の神を見てみたいというので、その日の内に向かいました。新山さんは「素晴らしい巨木だここで坐禅を奉納することにより、心までが清められるような気がする」と実施に向けての決断しました。

森の音楽会
森の音楽会

森の音楽会

 

 第1回はその年の8月に普段から坐禅で興雲寺に集まる40名ぐらいで開催したが、第2回森の坐禅会には、100名もの参加者が集まりました。その中の30名ぐらいは三沢米軍基地の方々でした。坐禅会は、一般の見学者にご迷惑をかけないようにと早朝に実施しています。また、音楽会も組入れられ本当に楽しめる会となりました。毎年実施する予定です。希望する方は、参禅道場「興雲寺」までお問い合わせください。

 

 

6.平野家のサイカチ (階上町)

平野家のサイカチ(国内最大級・階上町)
平野家のサイカチ(国内最大級・階上町)
サイカチの見学者
サイカチの見学者

 このサイカチは、階上町の平野建悟さんの庭の中にあります。地元では巨木として知られているが、天然記念物の指定などは受けていません。
 平成22年の4月。東北巨木調査研究会の調査により、環境省のデータベースに登録されました。サイカチとしては、岩手県藤沢町にある木(幹回り6・6メートル)、山形市にある木(同6・5メートル)に次ぎ、全国3位の巨木となりました。
 一家で枝切りや下草刈りなど大事に手入れをしてきた平野さんは「大変うれしい。木を見守ってきた先祖も喜んでいると思う」と語ります。近くに住む親類の平野雪子さんは「50年以上前に結婚してこの地に来た時は、サイカチの実を洗剤として洗髪や食器洗いに使っていた」というほど平野家先祖代々生活の中に息づいていました。
 見学する場合は、一言挨拶してからにしてください。

5.釜淵観音のイチョウ (田子町)

釜淵観音(田子町)
釜淵観音(田子町)
青森県重宝 弥勒菩薩 奇峰学秀
青森県重宝 弥勒菩薩 奇峰学秀

奇峰学秀が千体の仏を収めた

釜淵観音の境内にある銀杏

 仏像に多少なりとも関心のある人だったら必ず記憶しているはずの円空という僧がいます。今の岐阜県の生まれで若くして出家し、関東・東北から蝦夷地にまでも行脚して、二千体以上の仏像を残した人です。この円空の作品と比肩してはばからない価値高い作品を数多く制作した傑僧、奇峰学秀がわが郷土から出たということは同郷人として大いに誇ってよいことです。
 この人の作品がいかにすぐれたものであるかは、昭和五十二年九月十五日から一カ月にわたって青森県郷土館が「庶民の心を彫る円空と学秀仏」という特別展を開催、八戸市立博物館でも同じような展示会を催し、ともに好評を得たという事実からもお分かりいただけると思います。

 その奇峰学秀の作仏した像がある釜淵観音境内の入口に誇るように立っているイチョウです。

 

4.薬研で熊に遇う

たまには熊さんに遭う
たまには熊さんに遭う
小熊はすぐ薮の中へ
小熊はすぐ薮の中へ

クマとの遭遇

 

 2010年7月7日大間に取材にいきました。大間にいる東北巨木調査研究会の野崎会員は菅江真澄の研究家でもあり、原稿依頼もありますが大間の巨木案内と真澄の見た風景の写真を撮ろうと思ったのです。

 恐山を撮影し、薬研をとおり佐井方面に向っている時でした。黒い猫のようなものが2匹道路で遊んでいました。近づいていくと何と小熊でした。傍らを見ると母熊がこちらを見ているではありませんか。親子連れは危険とわかっていたのですが、こちらを見て優しそうな目で見ていたのです。

ななんと目が合ってしまった
ななんと目が合ってしまった

野生の王国

 

 見ていても、こちらに来そうもないので写真を撮らせていただきました。そのうちに何と目が合ってしまったのです。カメラを向けているのが分かったのか薮の中に消えていきました。クマに遇ったことを仲間に電話したら、普段から高渕会長は十和田のクマと呼ばれているので「高渕会長が出張していたのか?」と言われました。

 クマさんに遇ったあとに、サルの一群に遇うは、ウサギ遇うは、ヘビに遇うは正に野生王国という感じでした。クマさんに遇ったときは、危険ですから私の真似をしないで一目散に逃げてください。

 

駆除されたツキノワグマ
駆除されたツキノワグマ

熊を一匹もらう

 

 最近熊が増えてきているのか、里山でも良く出没しています。畑とか人に害を与えるので駆除されています。熊は罪の意識はなく、生きるための行動なのですけど「人間社会中心の世の中」ですから仕方ないのですね。

 田子町の仲間からいただいたのですが、知人内では熊の食べ方をよく分からないので、内蔵など知人の知人でほしいという方にさしあげました。毛皮は希少価値があるのでほしいと思いましたが、結局家族の反対あい断念しました。結局行き所がなくなり、いつもお世話になっている仲間の山田さんに話したらが「欲しい」というのでさしあげました。

 敷物に鞣す(なめす)と3万円ぐらい。剥製(はくせい)にするのであれば10万円かかるそうです。敷物は裏を付ければ30万円ぐらいで売れると言っていました。アクセサリー売場では熊の爪に皮のヒモをとおして1万5千円で売っていました。ということは、この熊に爪が20本付いていたので30万円ということです。これをただであげた私も太っ腹ということです。せめで記念にと牙を上下4本いただき熊避けのお守りにしようと思っています。

3.山で会った妖精たち

ブナの巨木で生まれたセミ
ブナの巨木で生まれたセミ

生まれたばかしの「ヒグラシ」 

 

 ドロヤナギの巨木に案内した。その途中のブナの巨木に殻から脱皮したばかりのセミを発見した。羽はまだ柔らかくようやく樹の幹にしがみついているようだ。

 あまりにも感動的な場面だったので、3人でしばらくの間眺めていました。命の尊さを知った一瞬でもありました。

 

 木漏れ日をしずかにしずかに吸いこみて

  化身したるやひぐらしは今  光雪

 

 

カモシカの子どもに遭う

 

 渓流釣りをしていると、カモシカの子どもが急斜面を降りてきました。私と目が合うと、しばらくじっと見ていました。珍しい動物がいると思っているのかも知れません。

 私たちは、動物たちにとっては自然界を破壊する一番の天敵なのではないでしょうか。

空の色したカミキリ

 

 ハンノアオカミキリ(榛の青・髪切)は5月〜8月頃に現れ、青味がかったシルバー地に黒い斑紋のある美しい金属光沢をした羽のカミキリムシです。成虫はオ ヒョウ、シナノキ、トチノキなどの生葉の葉柄、葉脈などを食べ、非常に警戒心が強く、近づくとすぐに飛んで行ってしまいます。虫の名は幼虫がハンノキ(榛 の木)を食べ、体色が青いところから付いたといいます。

北限のサル

 

 下北のサルたちは、木の芽や笹などを食べて厳しい冬を耐えます。脇野沢では、町中までサルが降りてきます。そして里の畑などで食べ物を探しています。むつ市より委嘱され、そのサルを追い払う「サル追い」という人達が十数人います。

 

 

 里へ出て冬芽を食べる子ザルさえ

  追わなきゃならぬ「サル追い」人は

               光雪

 

2.茨島のトチ (階上町)

巨木めぐりウォーク(階上町・茨島の栃)
巨木めぐりウォーク(階上町・茨島の栃)

 2010年6月13日(階上町)に第1回巨木めぐりウォークが開催されました。階上町は巨木の町で、歩行する約15キロの間に10本もの素晴しい巨木があります。

 ウォーキングクラブMTC21と東北巨木調査研究会との共催事業となりました。初めてのイベントでしたが、最近の巨木ブームもあり84名の参加者が集まりました。

 参加者は一様に巨木の偉大さに感心することしきり、各巨木の前では東北巨木研究会の私「田子の小熊」が解説をしました。

茨島のトチ


 青森県天然記念物・青森県最大級、推定樹齢850年のトチです。所有者は隣りの茅葺き屋根の茨島家です。落葉性の高木で、水気を好みます。葉は非常に大きく、この地域では最大級の葉です。葉柄は長く、その先に倒卵形の小葉5~7枚を掌状につけ(掌状複葉)、全体の長さは50センチにもなります。葉は枝先に集まって着き秋になると無数のトチの実がつきます。この木の枝は長く支柱でささえています。

 巨木めぐりウォークのあった当日は、無数の花が咲いていました。秋にこの実を拾って庭に植えたり、打身の薬にしている人もいるそうです。

 

 

 

巨木の説明をする「田子の小熊」
巨木の説明をする「田子の小熊」

1.巨木への祈り

法量のイチョウ
法量のイチョウ

 人は昔から巨木や巨石、その他あらゆる自然を敬いつづけてきました。科学が発達し、人間の傲慢で自然が破壊されています。そんな中にあって子どもたちは、生に対する観念が変わってきています。また、家族関係や友人関係、お隣さんとの関わりも薄れてきているような気がします。

 人は生き物であって、人生を楽しく助け合って仲良く暮らすことが大切です。何百年も生きてきた巨木は、あらゆる困難と戦って生き抜いてきた大先輩になります。

 巨木と向き合うとき、その知恵とエネルギーをいただけるような気がします。それは、短命の人間を長寿の巨木が大きな愛で包み込んでくれるからに相違ありません。その証に人は巨木の前に祠を建て祈りを捧げているのです。